
はじめに
2026年4月4日のAWSアップデートは8件です。CloudWatch Query StudioがPromQLをネイティブサポート(プレビュー)、EMRにKiro powersによるSparkトラブルシューティングエージェントが追加、Bedrock Guardrailsのクロスアカウント保護がGAになりました。監視まわりの統合が進んだ一日です。
注目アップデート深掘り
Amazon CloudWatch Query Studio Preview - PromQLネイティブサポート
PromQLとは? Prometheusが採用しているクエリ言語です。Kubernetesの監視で広く使われており、
rate()やavg_over_time()といった関数でメトリクスを柔軟に集計できます。CloudWatch Metrics Insightsとは構文が異なるため、これまでは使い分けが必要でした。

CloudWatchにPromQLネイティブサポートが入りました。PrometheusベースのメトリクスとCloudWatchメトリクスを併用している環境では、別々の画面とクエリ言語を使い分ける必要があった。Query Studioでは両方を1つのインターフェースで扱えます。
対応リージョンは現時点で5つ(バージニア、オレゴン、シドニー、シンガポール、アイルランド)。東京リージョンはまだプレビュー対象外ですが、今後の追加に期待です。
検証ポイント
PromQLでEC2のCPU使用率を5分間の平均で取得する例:
# CloudWatch Metrics Insights
SELECT AVG(CPUUtilization) FROM "AWS/EC2" WHERE InstanceId = 'i-1234567890abcdef0'
# PromQL
avg_over_time(aws_ec2_cpuutilization{instance_id="i-1234567890abcdef0"}[5m])
OpenTelemetryメトリクスとAWSメトリクスを同一クエリで扱えるのが実用上のポイントです。アプリのリクエスト数とEC2のCPU使用率を相関分析するケース:
rate(http_requests_total[5m]) / on() group_left aws_ec2_cpuutilization
従来は画面を行き来して手動で突き合わせていた作業が、ワンクエリで済みます。
Amazon EMR - Spark トラブルシューティング with Kiro Powers
Kiro powersとは? AWSのAIコーディングアシスタント「Kiro」のプラグイン機能です。IDE上でKiroをインストールし、各種powersを追加することで特定ドメインのAI支援が受けられます。MCP Proxy for AWS経由でIAMロールベースの認証を行い、操作はCloudTrailに記録されます。
Sparkジョブのトラブルシューティングは、ログを追ってメモリ設定やパーティション戦略を手動で調整する地道な作業でした。Kiro powersはログ・メトリクス・設定を横断的に分析し、根本原因の特定から修正案の提示まで自動化してくれます。
対応環境はEMR on EC2とEMR Serverless。PySpark向けには具体的なコード改善案も出力されます。
トラブルシューティングの例
メモリ不足エラーが発生した場合、従来は手動でログを追う必要がありました:
$ aws emr describe-step --cluster-id j-1234567890ABC --step-id s-1234567890ABC
$ aws logs get-log-events --log-group-name /aws/emr/j-1234567890ABC/spark
Kiroはこれらを自動解析し、以下のような改善案を提示します:
# Kiro が提案する修正例
spark = SparkSession.builder \
.appName("OptimizedExample") \
.config("spark.sql.adaptive.enabled", "true") \
.config("spark.sql.adaptive.coalescePartitions.enabled", "true") \
.getOrCreate()
large_df = spark.read.parquet("s3://bucket/large-dataset/") \
.repartition(200) # 最適なパーティション数をKiroが提案
result = large_df.groupBy("category").agg({"amount": "sum"}) \
.write.mode("overwrite").parquet("s3://output-bucket/")
Sparkバージョンのアップグレード支援も別のpowerとして提供されています。EMR 6.5 → 7.12 のような大きなジャンプでも、コード変換・依存関係の解決・データ品質比較まで対応。全商用リージョンで利用可能です。
SRE視点での活用ポイント
CloudWatch Query Studioの運用活用
Kubernetesクラスター上のマイクロサービス監視では、PrometheusでアプリケーションメトリクスをCloudWatchでAWSリソースメトリクスを別々に見ていたケースが多いはずです。Query Studioで統合できれば、障害対応時の根本原因分析がシンプルになります。
レスポンス時間の劣化が起きた際、アプリのレイテンシとRDSの接続数、EC2のCPU使用率を同時に分析して相関を特定できる。PromQLベースの複雑な条件でCloudWatchアラートを設定することも可能です。ただしプレビュー段階なので、本番アラートへの組み込みはGA後が無難でしょう。
EMR Spark運用の自動化
データパイプラインのSparkジョブ失敗は深夜や休日に起きがちです。Kiro powersの自動診断をオンコールランブックに組み込めば、一次対応の負荷を減らせます。「Kiroに初期診断を実行させ、提案された修正案を確認する」というステップを加えるイメージ。
ただし本番環境への導入は段階的に。まずdev/staging環境でKiroの提案精度を検証し、誤った修正が適用されるリスクを把握しておくべきです。
セキュリティとコンプライアンス
Bedrock GuardrailsのクロスアカウントGA化で、Organizations配下でのAIモデル利用ポリシーを一元管理できるようになりました。有害コンテンツの最大88%をブロックできるとされています。Secrets ManagerのカスタムKMSキー対応と合わせて、暗号化ポリシーの柔軟化にも活用できます。
全アップデート一覧
SageMaker Data Agentとは? Amazon Bedrockのモデルと連携して、構造化・非構造化データに対する推論を実行するマネージドサービスです。データソースへの接続とプロンプト実行をサーバーレスで処理します。
| サービス | アップデート内容 |
|---|---|
| AWS Glue | Schema Registry が新たに3リージョンで利用可能に |
| Amazon EMR | Kiro powers による Spark トラブルシューティング・アップグレードエージェント |
| Amazon Bedrock | Guardrails のクロスアカウント保護が GA |
| Amazon SageMaker | Data Agent にチャート機能とマテリアライズドビューを追加 |
| AWS Secrets Manager | コンソールでカスタムKMSキーの入力が可能に |
| AWS Marketplace | Partner Revenue Measurement で Marketplace Metering をサポート |
| AWS Partner | 特定サービスで User Agent 文字列をサポート |
| Amazon CloudWatch | Query Studio で PromQL ネイティブサポート(プレビュー) |
まとめ
8件中、CloudWatch Query StudioのPromQLサポートとEMRのKiro powersが実務へのインパクトが大きいです。前者はPrometheus + CloudWatchの二重管理から脱却できる可能性があり、後者はSparkジョブの障害対応を自動化する手段を提供しています。Bedrock Guardrailsのクロスアカウント保護GA化も、マルチアカウント環境でAIを運用しているチームに効くアップデートです。