はじめに

今回は2026年2月〜3月にかけてのNew Relicアップデートをまとめてお届けします。Infrastructure Agentの3リリース(v1.72.7〜v1.72.9)に加え、2月のプラットフォームアップデート11件を取り上げます。

特に注目すべきは、CVE-2026-22184のセキュリティ修正を含むInfrastructure Agent v1.72.8と、AIによる障害調査自動化を実現するSRE Agentの登場です。また、No Code Parsingによるログ解析の大幅な効率化や、Pipeline Control Gatewayによるテレメトリデータの事前処理機能など、SREの日常業務に直結するアップデートが充実しています。

注目アップデート深掘り

Infrastructure Agent v1.72.8 — CVE-2026-22184 セキュリティ修正

Infrastructure Agent v1.72.7→v1.72.9 リリースタイムライン

Infrastructure Agent v1.72.8では、CVE-2026-22184への対応が行われました。このセキュリティ修正は、エージェントの安全な運用を維持するために早急なアップグレードが推奨されます。

アップグレード手順

Linux環境の場合:

# 現在のバージョン確認
$ newrelic-infra --version

# パッケージマネージャーでアップグレード(Amazon Linux / RHEL)
$ sudo yum update newrelic-infra -y

# Ubuntu / Debian
$ sudo apt-get update && sudo apt-get install newrelic-infra -y

# アップグレード後の確認
$ newrelic-infra --version
# 1.72.8 以上であることを確認

# サービス再起動
$ sudo systemctl restart newrelic-infra

v1.72.9(3月23日リリース)ではさらに、nr-control メタデータサービスとの統合が追加され、Go 1.25.8・gRPC 1.79.3へのアップデートも含まれています。セキュリティ修正と合わせて、v1.72.9への一括アップグレードを推奨します。

v1.72.7ではEOL(End of Life)OSのサポートが削除されています。古いOSで運用している環境では、アップグレード前にサポート対象OSの確認が必要です。

SRE Agent — AIによる障害調査の自律自動化

SRE Agent 障害対応フローの Before / After

SRE Agentとは? New Relicが提供するAIエージェント機能で、テレメトリデータに自然言語でアクセスし、障害の根本原因分析(RCA)と復旧推奨を自動的に行います。従来は人間が手動で行っていたダッシュボード確認→ログ調査→原因特定のプロセスを、AIが数分で自律的に実行します。

SRE Agentは2月のプラットフォームアップデートで最も注目すべき機能です。障害発生時に自然言語で状況を伝えるだけで、AIがテレメトリデータを横断的に分析し、根本原因の特定と復旧手順の提案を行います。

従来の障害対応フローとの比較

従来:アラート受信 → ダッシュボード確認 → ログ検索 → メトリクス相関分析 → 原因特定(30分〜数時間)

SRE Agent:アラート受信 → AIに状況を伝える → 自動分析 → 原因と復旧手順の提示(数分)

さらに、インシデントレポートの自動生成機能も備えており、ポストモーテム作成の工数も削減できます。AWS環境でECS/EKSを運用しているSREにとっては、コンテナのリスタートループやメモリリーク調査など、複雑な障害対応シナリオで特に威力を発揮するでしょう。

No Code Parsing — 正規表現不要のログ解析ルール作成

No Code Parsingは、ログの構造化を劇的に簡素化する機能です。従来は正規表現(Grok パターン)の知識が必要だったログ解析ルールの作成が、UIで抽出したいテキストを選択するだけで完了します。

SRE業務への影響

アプリケーションチームから「このログからエラー率を可視化したい」と依頼された際、従来は正規表現の試行錯誤に時間を取られていました。No Code Parsingなら、サンプルログを表示してフィールドを選択するだけで解析ルールが作成できます。

特にカスタムアプリケーションのログや、標準フォーマットに準拠していないログの構造化において、大幅な工数削減が期待できます。

SRE視点での活用ポイント

Infrastructure Agentのアップグレード戦略

v1.72.7でEOL OSサポートが削除されているため、アップグレードパスの確認が重要です。まずステージング環境でv1.72.9を検証し、問題なければ本番環境にローリングアップデートすることを推奨します。Terraformで管理している場合は、Launch Templateのユーザーデータでエージェントバージョンを固定できます。

Pipeline Control Gatewayの導入検討

Pipeline Control Gatewayとは? テレメトリデータ(ログ、メトリクス、トレース)をNew Relicに送信する前に、サンプリング・フィルタリング・データ変換を行うゲートウェイ機能です。不要なデータを事前に除外することで、データインジェストコストを最適化できます。

大量のログやメトリクスを送信している環境では、Pipeline Control Gatewayによるコスト最適化が有効です。従来はYAMLでの設定が必要でしたが、UIからの直感的なルール管理が可能になりました。

ダッシュボード変数の活用

ダッシュボードの変数機能が親子関係をサポートし、チャート名への変数埋め込みも可能になりました。たとえば「リージョン → クラスター → サービス」のドリルダウンビューを1つのダッシュボードで実現できます。

FROM SystemSample SELECT average(cpuPercent)
WHERE clusterName = {{cluster}}
FACET hostname
TIMESERIES

全アップデート一覧

カテゴリバージョン/機能概要
Infrastructure Agentv1.72.9nr-control メタデータサービス統合、Go 1.25.8 / gRPC 1.79.3 更新
Infrastructure Agentv1.72.8CVE-2026-22184 セキュリティ修正
Infrastructure Agentv1.72.7EOL OSサポート削除、nri-flex 1.17.5 / nri-winservices 1.4.4 更新
PlatformSRE AgentAI による障害調査の自律自動化・インシデントレポート自動生成
PlatformNo Code Parsing正規表現不要のログ解析ルール作成
PlatformNotebooksデータ分析と手順書を統合する次世代ドキュメント
PlatformHomepage運用情報を集約した専用ビュー
PlatformWorkflow AutomationAzure 連携によるノーコード自動化
PlatformUser Managementメール認証ベースの MFA 対応
PlatformPipeline Control Gatewayテレメトリデータの事前処理(サンプリング・フィルタリング)
PlatformAPM Rate Sampling分散トレーシングのレートサンプリング(Python Agent 対応追加)
PlatformInfra NRDOTOpenTelemetry 移行支援・コスト最適化 UI
PlatformDashboards変数の親子関係・チャート名への変数埋め込み
PlatformInfrastructure ElasticsearchOTel Collector ベースの Elasticsearch 統合監視

まとめ

今回のアップデートは「自動化」と「ノーコード化」がキーワードです。SRE Agentによる障害調査の自動化、No Code Parsingによるログ構造化の簡素化、Pipeline Control Gatewayによるデータ管理の効率化と、SREの手作業を減らす方向のアップデートが目立ちます。

Infrastructure Agentについては、CVE-2026-22184の修正が含まれるため、v1.72.9への早期アップグレードを推奨します。EOL OSサポートの削除(v1.72.7)もあるため、アップグレード前に対象環境の確認を忘れずに。

New Relicのプラットフォーム全体として、OpenTelemetryとの統合がさらに進んでおり、ベンダーロックインを避けつつNew Relicの強力な可視化・分析機能を活用できる方向に進化しています。